「チラミン」という言葉を聞いたことはありますか?
私たちの身近な食品に多く含まれているこの成分は、健康や体調、特に頭痛や高血圧と深く関わっています。
今回は、このチラミンが私たちの体にどのような影響を与えるのか、そのメカニズムと健康的な食生活を送るためのヒントを分かりやすく解説します。
チラミンとは何か?
チラミンは、アミノ酸の一種である「チロシン」が分解されてできる物質です。チーズやチョコレート、発酵食品など、熟成や発酵の過程を経る食品に多く含まれています。

チラミンが健康や体調に与える影響
健康な人の体内には、「モノアミン酸化酵素(MAO)」という酵素があり、この酵素がチラミンを分解して無毒化します。
しかし、何らかの理由でこの酵素の働きが低下したり、過剰なチラミンを摂取したりすると、体に様々な影響が現れます。
1. 偏頭痛の誘発
チラミンは、血管を収縮させる作用を持つ「ノルアドレナリン」という神経伝達物質の放出を促します。
- チラミンを多く含む食品を摂取する。
- 体内のノルアドレナリンが増加し、血管が収縮する。
- その後、ノルアドレナリンが急激に減少すると、その反動で血管が拡張する。
この血管の急激な拡張が、偏頭痛の原因となるズキズキとした痛みを引き起こすと考えられています。
2. 血圧の上昇
チラミンは、ノルアドレナリンの放出を促すことで、血管を収縮させ、心拍数を増加させます。これにより、一時的に血圧が上昇することがあります。
高血圧の方はもちろん、体調によっては血圧が不安定になる可能性があるため、注意が必要です。特に、高血圧の治療薬であるMAO阻害薬を服用している方は、チラミンを多く含む食品を摂取すると、血圧が急激に上昇する「高血圧クリーゼ」という重篤な状態を引き起こす可能性があるため、医師の指示に従う必要があります。
チラミンが多く含まれる食品
チラミンを多く含む代表的な食品を挙げます。
- チーズ: 特に熟成されたブルーチーズやチェダーチーズなど。
- 発酵食品: 納豆、漬物、醤油、味噌など。
- チョコレート: カカオ含有量が多いほど、チラミンの量も多くなる傾向があります。
- 加工肉: ベーコン、ソーセージ、サラミなど。
- アルコール: 赤ワイン、ビールなど。
チラミン摂取で体調不良にならないために
チラミンは、健康な人であれば通常は問題なく分解される成分ですが、特定の体質や体調によっては、頭痛や血圧上昇などの不調を引き起こすことがあります。
ここでは、チラミンを摂取しても体調不良にならないための具体的な対策をいくつかご紹介します。
1. 摂取量をコントロールする
チラミンによる体調不良は、一度に大量のチラミンを摂取することで起こりやすくなります。
- 適量を守る: チラミンを多く含む食品を食べる場合は、一度にたくさん食べるのではなく、少量ずつ試してみましょう。
- 組み合わせに注意: チラミンを多く含む食品を複数同時に摂取することは避けましょう。例えば、赤ワインと熟成チーズを同時に摂ると、チラミンの量が過剰になる可能性があります。
2. 自分の体調パターンを把握する
チラミンに対する反応は個人差が大きいです。何が自分の体調不良の引き金になるのかを把握することが大切です。
- 日記をつける: 頭痛や体調不良が起きた日には、その前日に食べたものを記録しておきましょう。これにより、特定の食品との関連性を見つけることができます。
- 体調が悪い時は控える: 寝不足やストレス、疲労がたまっている時など、体調が不安定な時には、チラミンを多く含む食品を控えるようにしましょう。
3. チラミンの分解を助ける栄養素を摂る
体内でチラミンを分解する酵素の働きを助ける栄養素を積極的に摂ることも有効です。
- ビタミンB6: このビタミンは、チラミンを分解する酵素の働きをサポートします。魚、肉、バナナなどに多く含まれています。
- マグネシウム: 血管の収縮を抑え、偏頭痛の予防に効果があると言われています。海藻類やナッツ、大豆製品などを積極的に摂りましょう。
これらの対策を試すことで、チラミンによる体調不良を予防し、より健やかな食生活を送ることができます。
まとめ
チラミンは、健康な人であれば通常は問題なく分解される成分です。しかし、偏頭痛持ちの方や、特定の薬を服用している方、体調が不安定な時には、体調不良の引き金となる可能性があります。
日頃から自分の体調を観察し、特定の食品を摂取した後に頭痛や体調不良が起こる場合は、その食品との関連性を疑ってみるのも良いでしょう。
チラミンを過度に恐れる必要はありませんが、知識として知っておくことで、より健やかな食生活を送る手助けになります。
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