専業主婦とワーキングマザーは、どちらも子どもを育てる母親であり、家庭という大切な場所を支える存在です。
それぞれのライフスタイルには、メリットとデメリット、そして独特の苦労があります。
「楽」「時間に余裕がない」といった一言で片付けられるものではなく、個々の家庭環境、子どもの年齢、性格、パートナーとの関係性、そして本人の価値観によって、その実態は大きく異なります。
ここでは、差別や偏見なく、それぞれの置かれた状況を分析し、より良い家庭運営のためのヒントをお伝えしていきます。
専業主婦とワーキングマザーの違いと共通点
専業主婦
主な役割: 家庭内の家事育児全般を担うことが多い。
- 時間の使い方: 基本的に家事や育児を中心に時間を設計する。子どものスケジュールに合わせて動く柔軟性がある。
メリット
- 子どもの成長を間近で見守れる時間が多い。
- 習い事の送迎や学校行事への参加など、子どもの活動に柔軟に対応できる。
- 家庭内のことを自分のペースで進められる。
デメリット
- 経済的にパートナーに依存することが多く、引け目を感じる場合がある。
- 社会との繋がりが希薄になりがちで、孤独感や閉塞感を覚えることがある。
- 自身のキャリアの中断やブランクが課題となる。
ワーキングマザー
主な役割 家庭内の家事育児に加え、社会的な仕事も担う。
- 時間の使い方: 仕事と家庭のタスクを両立するため、限られた時間を効率的に使う必要がある。
メリット
- 経済的に自立し、家計に貢献できる。
- 仕事を通して社会との繋がりを保ち、キャリアを継続できる。
- 自身の成長ややりがいを感じられる機会が多い。
デメリット
- 仕事と家庭の両立に心身ともに負担がかかりやすい。
- 時間的な制約から、子どもの活動に十分に関われないと感じることがある。
- パートナーや周囲の協力がないと、多大なストレスを抱えやすい。
共通点
どちらの母親も、子どもの成長を願い、家庭の幸せを第一に考えています。また、家事や育児といった「見えない労働」を日々こなし、その努力は時に周囲から軽視されがちです。

専業主婦とワーキングマザーが効率の良い働きをするための工夫
専業主婦
専業主婦の「働き」は、家事・育児・家庭運営です。効率よく「働く」ことで、自分自身の時間を確保し、QOL(生活の質)を高めることができます。
家事の効率化
- ルーティン化: 曜日ごとにやるべき家事を決める(例:月曜日はシーツ洗い、火曜日は水回りの掃除など)。
- 家電の活用: 食洗機、ロボット掃除機、乾燥機付き洗濯機などを積極的に導入し、家事の自動化・時短を図る。
- 「ついで掃除」: 料理の待ち時間や子どもの着替えのついでに、簡単な掃除や片付けを行う。
育児と自己成長の両立
- 子どものお昼寝時間を有効活用: 趣味や勉強、読書など、自分のための時間に充てる。
- 社会との接点を持つ: 地域の子育てサークルに参加したり、ボランティア活動を始めたりする。
- オンライン学習: スキマ時間で資格取得の勉強や、興味のある分野のオンライン講座を受講する。
パートナーとの協力
- 家事・育児の分担: 「やってもらって当たり前」ではなく、パートナーに具体的に手伝ってほしいことを伝え、二人で協力して家庭を築く意識を持つ。
- 感謝の気持ちを伝える: 専業主婦の「仕事」への理解を深めてもらい、感謝の気持ちを伝えることで、お互いの信頼関係を築く。

ワーキングマザー
ワーキングマザーの「働き」は、仕事と家事・育児の両立です。いかに効率よく時間を使い、心身の負担を減らすかが重要です。
時間の有効活用
- 朝の活用: 子どもが起きる前の30分〜1時間で、家事や身支度を済ませてしまう。
- 通勤時間の活用: ニュースアプリで情報収集したり、オーディオブックで勉強したりと、インプットの時間にする。
- 「ながら作業」の徹底: 夕食を作りながら翌日のお弁当の準備をする、洗濯を回しながらメールをチェックするなど。
家事のアウトソーシング
- 外部サービスの利用: 食材宅配サービス、ミールキット、家事代行サービスなどを利用し、負担を軽減する。
- ネットスーパー: 買い物の時間を省き、子どもの世話や仕事に時間を割く。
パートナーとの協力
- タスクの明確化: 家事・育児の分担を具体的に決め、見える化する。
- 情報共有: 子どもの学校行事や予防接種のスケジュールなどを共有し、二人で対応する。
- お互いの努力を認め合う: 「やってもらって当たり前」という意識を捨て、お互いの忙しさを理解し、感謝を伝え合う。

子供の年齢別役割分担表
子どもの成長段階に合わせて、役割や分担のあり方も変化します。以下は、専業主婦とワーキングマザーのどちらの家庭にも共通して活用できる、家事・育児の役割分担のヒントです。
子供の年齢 | 専業主婦/主に家事育児を担う親の役割 | ワーキングマザー/主に仕事をする親の役割 | 子供の役割(できること) |
0歳〜2歳 (乳幼児期) | ・授乳/離乳食の準備 ・おむつ替え、沐浴 ・日中の遊び相手 ・保育園の連絡帳の記入 | ・夜間の授乳/おむつ替えの協力 ・お風呂に入れる ・寝かしつけ ・家事(洗濯、掃除など) | ・なし |
3歳〜5歳 (幼児期) | ・保育園/幼稚園の送り迎え ・園の準備(持ち物チェック) ・食事の準備と後片付け ・子どもの習い事の送迎 | ・お風呂に入れる、寝かしつけ ・休日の家事(買い出し、掃除) ・園の行事への参加 ・育児情報の共有と相談 | ・おもちゃを片付ける ・自分の服を脱ぐ/簡単な着替え |
6歳〜10歳 (小学校低学年) | ・学校の準備物チェック ・宿題を見る ・習い事の送迎 ・保護者会への参加 | ・休日の家事(買い出し、料理) ・子どもの送り迎えや遊び相手 ・PTA活動への参加 ・家族旅行やイベントの企画 | ・自分の部屋を片付ける ・食器を運ぶ、簡単な盛り付け ・お手伝い(洗濯物を畳むなど) |
11歳〜15歳 (小学校高学年〜中学生) | ・進路相談、学習サポート ・部活動のサポート ・友だち関係の相談に乗る ・家庭内でのコミュニケーション | ・仕事の合間に進路や勉強の相談に乗る ・休日の家事や家族サービス ・子どもとの共通の趣味を楽しむ | ・自分の身の回りのこと ・簡単な家事(料理、洗濯、掃除) ・自分の意見や気持ちを伝える |
※注意点: この表はあくまで一例です。家庭の状況や、パートナーとの話し合いによって、柔軟に役割を変えていくことが大切です。また、子どものお手伝いは、強制するものではなく、感謝を伝えながら、自立心を育む機会として捉えることが重要です。
(例)専業主婦の1日のルーティン
乳幼児期は子どもの生活リズムに合わせることが中心になり、学齢期になると学校や習い事のスケジュールが加わり、より計画的な動きが求められます。

乳幼児期(0歳〜3歳)
この時期は、子どもの睡眠時間や食事時間が不規則なため、一日のスケジュールは柔軟に組み立てる必要があります。
午前
- 6:00〜7:00:起床。子どもの授乳や離乳食、おむつ替え。家族の朝食準備。
- 7:00〜8:00:夫の出勤を見送り、家事(洗濯機を回す、朝食の後片付けなど)。
- 8:00〜12:00:子どもの遊び相手、読み聞かせ、散歩や公園へのお出かけ。子どもの午前の昼寝時間中に、家事や休憩。
午後
- 12:00〜13:00:昼食。子どもの離乳食、自分の食事。
- 13:00〜15:00:子どものお昼寝。この時間を利用して、まとまった家事(掃除、夕食の準備など)や自分の時間(趣味、勉強など)を確保。
- 15:00〜18:00:子どもとのおやつタイム、遊び時間。児童館や習い事(リトミックなど)へ出かけることも。
夜
- 18:00〜19:00:夕食の準備と食事。
- 19:00〜21:00:お風呂、子どもの寝かしつけ。この時間が、一日の中で最も忙しく、体力を消耗する時間帯でもあります。
- 21:00〜23:00:夫の帰宅。子どもの就寝後は、夫婦の団らん、家事の仕上げ、翌日の準備、自分の自由時間など。
幼稚園・保育園期(3歳〜6歳)
子どもが園に通い始めると、生活リズムが安定します。送迎や園の行事がルーティンに加わります。
午前
- 6:30〜7:30:起床。家族の朝食準備、身支度。
- 7:30〜8:30:子どもの朝食、着替え、登園準備。
- 8:30〜9:30:子どもの登園。送迎後、帰宅して家事をスタート。
- 9:30〜12:00:掃除、洗濯、買い物など、まとまった家事を行う時間。自分の時間も確保しやすくなります。
午後
- 12:00〜13:00:昼食。園から帰ってくるまでの間に休憩をとったり、趣味の時間に充てたりします。
- 13:00〜15:00:園のお迎えの時間に合わせて、夕食の準備を始めます。
- 15:00〜16:00:子どものお迎え。
- 16:00〜18:00:子どもとのおやつ、公園や習い事。子どもが一人で遊んでいる間に、夕食の仕上げや明日の準備。
夜
- 18:00〜19:00:夕食。
- 19:00〜21:00:お風呂、絵本を読んで寝かしつけ。
- 21:00〜23:00:子どもが寝た後の夫婦の時間、家事、自分の自由時間など。
学齢期(小学校)
子どもが学校に通うようになると、学校のスケジュールや宿題、習い事が生活の中心になります。
午前
- 6:30〜7:30:起床。家族の朝食準備。
- 7:30〜8:30:子どもの朝食、身支度、学校の準備。
- 8:30〜9:00:子どもの登校を見送る。
- 9:00〜12:00:掃除、洗濯、買い物、夕食の準備など、家事の大部分をこの時間に行います。ランチや友人との交流を楽しむ時間も持てます。
午後
- 12:00〜13:00:昼食。
- 13:00〜15:00:家事の続きや、自分の時間、PTA活動や地域のボランティアに参加することも。
- 15:00〜17:00:子どもの下校。おやつ、宿題を見てあげる時間。習い事の送迎がある場合も。
- 17:00〜18:00:夕食の仕上げ。
夜
- 18:00〜19:00:夕食。
- 19:00〜21:00:宿題の丸つけや見直し、翌日の準備。子どもとの交流時間。
- 21:00〜23:00:子どもの就寝後、夫婦の時間や自分の自由時間。
このように、専業主婦の一日は子どもの成長段階に合わせて柔軟に変化します。
しかし、どの年代においても、家事や育児の合間にいかに自分の時間を見つけ、心身ともにリフレッシュするかが大切です。
(例)ワーキングマザーの1日のルーティン
ワーキングマザーの一日は、仕事と家庭のタスクを両立させるため、分刻みのスケジュールで動き、「いかに効率よく時間を使い、心身の負担を減らすか」が共通のテーマとなります。

乳幼児期(0歳〜3歳)
この時期は、保育園の送迎や子どもの体調不良など、突発的なタスクが多く、柔軟な対応が求められます。
午前
- 6:00〜7:00:起床。身支度、朝食の準備、子どもの着替え。子どもが起きる前に、少しでも家事を進めておくのがポイント。
- 7:00〜8:00:家族で朝食。子どものお世話(離乳食、授乳、おむつ替えなど)をしながら、自分の食事も済ませる。
- 8:00〜9:00:保育園の準備(連絡帳の記入、持ち物チェック)。子どもを連れて保育園へ出発。
- 9:00〜17:00:仕事。
午後
- 17:00〜18:00:保育園へお迎え。子どもと少し話したり、今日の出来事を聞いたりする時間。
- 18:00〜19:00:帰宅後、夕食の準備。ミールキットや作り置きを活用して、調理時間を短縮。
- 19:00〜20:00:夕食。この時間帯は、子どもの食事の世話と自分の食事を同時に行うため、慌ただしくなりがち。
- 20:00〜21:00:お風呂、子どもの寝かしつけ。夫と分担したり、入浴中に子どもと遊びながら済ませたりと工夫が必要。
夜
- 21:00〜22:00:子どもの就寝後、家事の仕上げ(洗濯物の片付け、食器洗い、明日の準備など)。
- 22:00〜23:00:自分の自由時間、夫との団らん。疲れてすぐに寝てしまう日もあります。
幼稚園・保育園期(3歳〜6歳)
子どもが自分でできることが増え、少し時間に余裕が生まれますが、園の行事や習い事の送迎などが加わります。
午前
- 6:30〜7:30:起床。身支度、朝食の準備、子どもの着替え。
- 7:30〜8:30:家族で朝食。子どもに自分のことをさせる習慣をつける(例:自分で服を着る、歯磨きをするなど)。
- 8:30〜9:30:保育園・幼稚園へ送る。
- 9:30〜17:00:仕事。
午後
- 17:00〜18:00:お迎え後、公園に寄ったり買い物をしたり。
- 18:00〜19:00:帰宅後、夕食の準備。
- 19:00〜20:00:家族で夕食。子どもとのコミュニケーションを大切にする時間。
- 20:00〜21:00:お風呂、寝かしつけ。この時間帯に、子どもと一緒に翌日の準備をしたり、絵本を読んだりする。
夜
- 21:00〜22:00:家事の仕上げ。夫と家事を分担することで、負担を軽減。
- 22:00〜23:00:自分の時間、夫婦の時間。
学齢期(小学校)
子どもが成長し、家事のお手伝いができるようになりますが、宿題や習い事、友人関係など、サポートすべきことも増えてきます。
午前
- 6:30〜7:30:起床。朝食の準備、身支度。
- 7:30〜8:30:家族で朝食。子どもに自分の身支度や学校の準備を任せる。
- 8:30〜9:00:子どもを送り出す。
- 9:00〜17:00:仕事。
午後
- 17:00〜18:00:帰宅。夕食の準備をしながら、子どもの宿題をチェックしたり、今日の出来事を聞いたりする。
- 18:00〜19:00:家族で夕食。
- 19:00〜20:00:子どもとの時間(遊び、読書など)。習い事の送迎があれば、この時間帯に調整。
- 20:00〜21:00:子どもと一緒にお風呂。
夜
- 21:00〜22:00:子どもの就寝後、家事の仕上げ、翌日の準備。
- 22:00〜23:00:自分の時間。仕事のスキルアップのための勉強や、趣味の時間に充てることも。
ワーキングマザーは、仕事と家庭のタスクを効率よくこなすために、家電製品の活用や外部サービス(食材宅配、家事代行など)の利用を積極的に取り入れることが大切です。また、夫や家族、地域のサポートを借りながら、無理のない範囲で日々を乗り越えていくことが重要になります。
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